地植えでのコガネムシ対策
コガネムシ対策(その1)・被害と鉢植えでの対策でご紹介したように、鉢植えの場合は鉢から出して土を変えることが容易にできますが、地植えの場合はそういった作業はなかなか困難です。
数年前、当店が管理しているお庭でも、直径3mほどの花壇から何百匹ものコガネムシの幼虫が出てきたことがあります。そのときは、花壇に敷き詰めていたローマンカモミールが相当被害にあいましたが、掘り上げて幼虫を取り除く作業をしたところ、その後は被害はなくなりました。
また、他のお庭でも、土を掘ると、ときどき、数匹のコガネムシの幼虫が見つかることはありますし、当店の畑を耕すときも時々見かけますが、大量発生しない限りは、それほど問題はないようです。おそらく天敵などによって数も抑制されているのでしょう。
地植えの場合、鉢植えのように不織布などの被覆材で覆うことも一つの方法ですが、見た目が悪くなったり、移植などの作業が行いにくくなるというデメリットもあります。
あまり被害が多発する場合は、フェロモンなどで誘引して捕まえるトラップなどを利用したり、下記のように表土を覆って産卵させにくくするような対策も考慮してみると良いでしょう。
花壇でのコガネムシ対策・実例紹介
順調な花壇
こちらは、市内の病院の駐車場脇に数年前に手がけた花壇です。日当たり、風通しも抜群の花壇のため、湿度の高い山陰にもかかわらず、ラベンダーやセイジ、タイムも徒長せず元気に育ってくれています。
毎年、大きなトラブルもなく、2014年の初夏も、グロッソラベンダーやオレガノハイブリッド、ダイヤーズカモミールが競って咲いてくれました。株元のレイタータイムも絶好調です。
毎年心配する梅雨明け後も好調で、この調子ならこの夏も問題なく越えそうだと安心していました。
突然の不調
ところが、10月のはじめ、涼しくなってきてむしろ勢いが戻って来るはずのレイタータイムになぜか元気がありません。夏の疲れかも・・・と、その時はあまり気にしていませんでした。
およそ一月後、なおさらタイムの調子が悪くなってきました。
タイムの枝を引っ張ってみると、すっと抜けてきます。
タイムの株元を掘り返してみると、いました。やはりコガネムシの幼虫。これが犯人のようです。細い根はほとんど食べられてしまっている感じ。周りもチェックしてみると、硬めの土なのに、妙にふわふわしています。ところどころ掘ると、何匹かコガネムシが出てきました。この調子だと、花壇の中には相当潜んでいると思われました。
ここも、100mも行かないところに里山があり、また花壇のすぐ脇に街灯や照明付きの看板があってコガネムシの成虫がやって来やすい場所です。
観察してみると、他のハーブたちもなんとなく元気がありません。
緊急に対策が必要な状況です。
問題
しかし、作業に当たって、以下のような問題がありました。
- 月に数回しかチェックができないので、被害を早めに見つけることが難しい。
- 人通りも多く、よく目立つ花壇のうえ、今後のメンテナンスも考えると、不織布などの被覆材で覆うのは避けたい。
- ラベンダーは植えて3年以上経っているうえ、根が食害されていることを考えると、一度掘り上げて植え直すのは非常に危険。
対策
問題3については、枯れてしまうことも覚悟の上で作業を行うことにしました。
根本的な対策としては、直径2〜3cmの化粧石を敷き詰めて、コガネムシの成虫に産卵させない環境に変えることにしました。
また、前段階の作業としてすでに花壇に入り込んでいると思われる幼虫をできる限り取り除く作業を行うことにしました。
作業1日目(11月初旬)
作業は、2014年の11月初旬に行いました。ある程度気温が下がり、移植しても比較的植物に負担がかかりにくいという点ではタイミングがよかったかもしれません。これが夏前とかですとなおさら難しい作業になっていたと思います。
まずは、植物の負担を減らすために、全ての株を強めに剪定します。
セイジやラベンダーは特に強めに剪定しておきます。
株はなるべく根を傷めないように掘り上げますが、すでに根が相当食害されていて、土がボロボロ落ちていきます。
レイタータイムも掘り上げてみたら細い根が全て食害されていました。植え戻しても根付いてくれるかさすがに心配です。
株を掘り上げたら、土を掘りながらコガネムシの幼虫を探しては取り除きます。根気のいる作業です。
寒くなってきたせいか、花壇のかなり下の方、30cmよりも深いところにいたりして、作業は難航しました。
1日目は午後から取り掛かったので、探索は花壇の半分だけしか進みませんでした。
それでも数百匹のコガネムシを捕獲しました。
残り半分から幼虫が移動しないようビニールで仕切りをして、植え直します。
コバルトセイジは比較的根の被害が少なく、まだつぼみが残っていたのであまり枝を減らす剪定にとどめました。
たっぷり水をやって1日目は終了。
作業2日目
天候の関係で数日間を置いて2日目の作業を行いました。2日目の範囲は比較的移植がたやすい種類も多く、気分的に楽に作業が進みます。
それでも1日目同様、百匹をはるかに超えるコガネムシを捕獲しました。このまま放っておいたら、花壇は壊滅していたかもしれません。
植え戻して水やりを終えたところです。
このあと、2センチの厚さで化粧石を敷き詰めました(迂闊にも写真を撮り忘れました・・・)。
年明け2月
年が明けて2月の様子です。まだあまり変化はありませんが、クロッカスやスノードロップが顔を見せはじめています。
ラベンダーやセイジはまだお休み中であまり成長は見られませんが、タイムは活着している模様です。
ひとつ失敗!化粧石の色合いが明るいため、春一番にせっかく咲いたスノードロップが全く目立ちません。これは迂闊でした。近くまで行くとわかるのですが、遠くから見ると花が咲いているのがわかりません。
4月の終わり
暖かな春の日差しを受けて、ようやく花壇にも緑が戻ってきました。植え替えの影響のため、例年よりは株も小さめですが、問題なく春を迎えることができたようです。
ラベンダーも無事新芽を出しました。形が揃っていませんが、今年はこのまま大きくして、秋以降に整えます。
セイジも新芽が勢いよく伸び始めました。
6月初旬
ラベンダーの花茎が伸び始めました。特に問題もないようです。タイムも順調に伸びつつあります。
ダイヤーズカモミールも調子良く開花。
このまま無事に梅雨と夏を乗り切ってくれれば安心です。
10月初旬
心配していた夏も無事に乗り切り、ラベンダーも形良く育ちました。
レイタータイムも昨年の不調が嘘のように元どおり。荒い化粧石の上をきれいに張っています。むしろ前よりも水はけがよくなって調子も良いようです。
セイジも元気です。
この様子ですと今年は花壇の中にコガネムシの幼虫もいない模様。一応1年目は「卵を産ませない」という目標が達成できたようです。
この調子で来年も育つよう願っています。
まとめ
鉢栽培にしても、花壇や地植えにしても、コガネムシがやってくる可能性はゼロではありません。成虫が飛んでくるので厄介ですが、幼虫自体はアブラムシなどのように増えていくことはありませんから丁寧に駆除すれば大丈夫です。
それにはまず、早期発見が第一です。また、バラを栽培しておられる方は被害や対処方法に詳しいですから、近くにいらっしゃる場合は相談して見られるのも良いと思います。
いかがでしたでしょうか。もし、まだ良く分からないことがあるという方のためには初心者の方専用ホットラインをご準備いたしております。ご質問等お気軽にお寄せください。