かろうじて冬越しができる種類の防寒、冬対策
ハーブの防寒・地植え編その2より続く
地域によって種類は異なりますが、その場所でかろうじて冬越しできるというハーブがあります。例えば、当店の畑ではレモンヴァーベナがそれにあたります。
レモンヴァーベナは松江近郊では屋外でだいたい越冬できるハーブで、なかには太い部分が腕ぐらいの太さまで成長したと言われる方もあるぐらい育つこともありますが、一方で極端に寒い冬や、小さい株の場合は「春になっても芽が出て来なかった」という報告を頂くこともあります。
当店の畑は、西に山が迫っているため、冬場は午後3時ぐらいには日陰になり、日照時間がかなり限られます。また、レモンヴァーベナを植えている場所は東側にビニールハウスが建っているので、午前の早い時間帯も日当りが遮られるうえ、北からの風がビニールハウスに沿って通りやすく、冬は強い北風にさらされやすい場所です。そのためか、特に防寒しない状態では今まで冬に枯れてしまったことが何度かありました。
もちろん、秋に掘り上げて屋根のあるところなどで管理すれば問題ないですが、せっかく大きく育っているのに、掘り上げて根を減らしてしまうのはもったいないですし、そもそも作業自体が結構大変です。
でも、「今年の冬、とても寒かったら・・・」とか、「何年前かのように大雪が降って春まで溶けなかったら・・・」とか、不安はつきません。
そこで、何もしないよりは寒さによる影響を減らすための簡易的な対策を行っておけば春まで安心です。
風を防ぐ
寒さにかろうじて耐えている植物にとって、風の影響はとても大きいものです。
我々人間にとっても同じ気温で風があるのとないのではずいぶん体感温度が違ってきます。一般には風速1メートルにつき、体感温度は1℃下がると言われています。気温0℃のとき、風速10メートルなら、体感的にはマイナス10℃! 植物が人間と同じように感じるかどうかは分かりませんが、影響は決して少なくないのではないでしょうか。
さて、ではその風を防ぐ方法です。色々な方法がありますが、一番簡単な、ビニールで行灯(あんどん)を作る方法で試してみましょう。これですと、支柱とビニールさえあれば作ることができます。
設置する時期
風よけを設置する時期は、やはり地域や種類によって異なりますが、落葉がはじまったり、葉に傷みが見え始める時期を目安にすると良いでしょう。また、積雪や霜が降りる前のほうが安心です。あまり寒くなると、作業自体が億劫になる事もあります。秋の天気が安定しているうちが作業しやすいものです。
写真は11月終わりのレモンヴァーベナです。だいぶ葉に傷みが見え始めましたし、葉も徐々に落ちつつあります。
材料
材料は支柱と筒状のビニール、あと、風で飛んでしまうのを押さえるため、石等の重いものがあると良いでしょう。
筒状のビニールは小さい株なら肥料や土の袋の底を切って使えば簡単です。今回は少し大きなレモンヴァーベナの株なので、ピートモスが入っていた大きな袋を使いました。ビニールの替わりに寒冷紗を使っても良いでしょう。
ビニール袋はサイズに応じて色々なものを試してみましょう。左からもみ殻用のとても大きな袋、ピートモスの袋、肥料の袋、用土の袋です。レジ袋のような、強度が無いものや、日に当たると劣化しやすい薄い袋はやめておきましょう。
まずは剪定
夏に大きく育ったレモンヴァーベナ、このレモンヴァーベナは植えてすでに4年近く経ち、現在株幅も背丈も1メートルを優に超えています。このままでは風よけもものすごく大きいものが必要になりますし、来年、このサイズからスタートしたら周りの株を圧迫しそうです。
まずは不必要な枝を剪定します。枝もかなり太くなっていますが、レモンヴァーベナはかなり強い剪定にも耐えますので、思い切り剪定しても大丈夫です。
また、成長期には上にもずいぶん伸びますので、かなり低くなるまで剪定しても良いでしょう。強い風に対しても有効です。
古い枝は新芽も出にくいのでしっかり剪定します。
ついでに細い枝も剪定します。
設置するビニールにうまく入るよう、形を整えていきます。
剪定完了です。こんなに小さくなりました。ここ数年、毎年これぐらいまで剪定していますが、夏を過ぎる頃には上の写真ぐらいまでまた伸びます。
支柱と風よけの設置
今回、支柱は3本用意しました。特定の方向からの風が強い場所なら3本の支柱がおすすめです。北風が強い場所なので北側に三角の頂点が来るようにします。
もちろん、株のサイズ等によっては四角形の行灯を設置しても良いでしょう。おおよその位置に支柱を立て、ビニール袋をかぶせててみます。上から見て、株が中に収まっているか確かめて見ましょう。
ビニールが具合よく入るかもチェックしながら支柱の位置を調整します。
ビニールの位置も問題ないようなら、支柱をしっかり土に差し込みます。
上から見るとこんな感じです。
強風で飛んで行かないよう、石でビニールの裾を押さえておきます。
ひとまず完成!これで強い風で株が傷む心配もありません。
ビニールが柔らかいと、下にずり下がりやすいことがあります。ちょっと硬めのしっかりしたビニールの袋なら自立しやすいです。もし柔らかくてずり下がる時は、洗濯バサミ等で留めても良いでしょう。
以上で作業は終わりです。行灯は、天井部をつけることもありますが、天気が良い日等は内側が高温になるのが心配です。その場合は、全面、または天井部だけ寒冷紗で覆う事もできます。霜対策としても有効です。
風よけを取り除く時期
風よけを取り除く時期も、ハーブの種類によって異なります。霜の恐れが無くなってきたころや、新芽が伸び始めてしばらくしたころ等でも良いでしょう。ただ、春は暖かくなった後もまた遅霜と言って急に冷え込むことがありますので注意しましょう。新芽の伸び始めに風よけを外すとダメージが大きいものです。新芽がある程度安定してから外すか、むしろ少し前のほうが良いと思います。
また、これらの、かろうじて冬越しができる種類の場合は、なおさら他の種類よりも新芽の出始めが遅いことがあります。上の写真のレモンヴァーベナの新芽も、松江で4月の半ば、春の気温の上昇が遅い時はゴールデンウィーク頃になる事もあります。ちなみに上の写真は、2013年、4月16日でした。
地域によって異なる種類
今回は、松江市での例としてレモンヴァーベナを上げましたが、他にも、ローズゼラニウム等、匂いゼラニウムの仲間も同じような防寒で越冬させやすくなります。
もちろん、地域によって対象の種類は違ってきます。例えば、もう少し寒い地域ではチェリーセイジやパイナップルセイジが該当するかもしれませんし、さらに寒い地域ではローズマリーが該当する事もあるでしょう。また、より暖かい地域ではレモングラスやヘリオトロープが該当する場合もあります。その上、年によって寒さも大きく異なりますので、色々試してみる必要があると思います。「昨年は越えたのに、今年は冬の間に枯れてしまった・・・」というような種類を試してみるのも良いでしょう。
まとめ
はじめにも言いましたが、風の影響というのは我々が思うよりもずっと大きいものです、一度試してみると、この防風対策の効果が大きい事がよく分かると思います。鉢植えのように移動できる種類は、吹きさらしの場所から、建物のかげなどに移すだけでも寒さからのダメージを大きく減らすことができます。是非試してみましょう。
いかがでしたでしょうか。もし、まだ良く分からないことがあるという方のためには初心者の方専用ホットラインをご準備いたしております。ご質問等お気軽にお寄せください。