毎朝の大事な作業
毎朝、スタッフが出勤すると、まず取り掛かる作業はご注文があった苗を準備することです。
たくさん種類がある苗の中からご注文に応じて苗を選び出す作業、これをピックアップと呼んでいます。一つの種類でも、何十株ある苗から端から取り出すのではなく、その中で一番調子が良さそうなのを選び出していきます。スタッフの目利きの力が問われます。
それから、その苗をお客様のもとに届けるために、苗をきれいにしていきます。まず、虫食いなどで傷んだ葉や枯れた枝を取り除きます。それから株元の古い葉で枯れそうなものもあらかじめ取り除いたり、健康そうな葉の裏もチェックしてアブラムシや害虫がついていないか、病気がないかも入念にチェックします。
スタッフの個性があらわれる仕事
古い葉の取り除き方法や、害虫の除去方法もスタッフによって千差万別です。
ハサミを使う人、上手に指と爪で葉も取り除いてしまう人。
細かいところを古歯ブラシで掃除する人、筆を使う人、それぞれやりやすい方法があるようで、個性が現れます。
株元に生えた小さな雑草や、苔なども竹ベラを使って取り除きます。
最初は世間話をしたり和気あいあいだったのが苗をひっくり返したり、葉をめくったりしているうちに、皆の目が真剣になってくることもあります。
最後に、育苗ポットを取り替えて根の状態を確認します。そのときにも、根詰まりや根腐れ、よくここに潜んでいるナメクジやダンゴムシがいないかも注意します。
この一連の作業、数がたくさんある日は、数人で作業しても午前中いっぱいかかることもある大切な作業です。
作業名への違和感
少し前まではこの作業はスタッフの間で「クリーニング」と呼ばれていました。
「あ、クリーニングが3件出ちょうけん、やっちょいて!」
とか、
「明日はクリーニングが結構あーかいね?」
と言った具合です。
ある日、スタッフ数人でクリーニング作業を行なっていた時、「ふと『クリーニング』ってなんか汚いものを綺麗にするって感じだよね」という話題になりました。
育てている苗には確かに見た目の悪い葉や、咲き終わった後の花がらがついていたりはしていますが、決して汚いものではありません。そもそも、なぜ最初に「クリーニング」と言い始めたかも覚えていませんが、今になってふと違和感を感じたのです。
その違和感が日を追うごとに募り、何かもっと良い呼び方はないかと思うようになってきました。
クリーニングからメイクアップに・・・ヒントはお客様からのメッセージ
そしてある日、「『クリーニング』じゃなくて・・・・『メイクアップ』が良いんじゃないか?」と思いつきました。
もともと汚くはないけれど、ちょっとやぼったくなっている苗たちをよそ行き用に少しだけおめかししてあげるという感じです。
この思いつきは、ずっと前からお客様からいただいたメッセージの中にヒントがあったのかもしれません。
何人ものお客様から
「愛情を持って育てた娘を嫁に出すような気持ちで送り出されたんですね」
とか、
「大事に育てられたこの子たちを、うちでもしっかり育てます」
というようなメッセージをいただいていました。
その時はそれほどピンと来なかったのですが、娘を嫁に出すような年齢に自分がなったせいもあるかもしれません。なんだかこの頃、その気持ちがよくわかるようになってきました。

おめかし前

おめかし後
それ以降、朝のクリーニングの作業はメイクアップ作業と呼ばれることになりました。
作業は変わらないけれど
「クリーニング」と呼んでいた頃も「メイクアップ」と呼び方が変わってからも、スタッフが行う作業には変わりはありません。
でも、言葉は言霊と言われることがあるように、メイクアップと呼ぶことで、ほんの少しだけでも作業が丁寧になっているかもしれません。
ただ、しばらくは、だれもが新しい名称に慣れず、つい「クリーニング」と口に出してしまって、「メイクアップだよ!」
とお互いに訂正される日々が続きました。