Q:先日、初心者の鉢植えセットを購入したものです。植物を育てるのも初めてだったので、簡単にタイムの鉢植えができてびっくりしました。ありがとうございました。
さて、近所に住む義理の姉は、バラやハーブを育てるのが上手でオープンガーデンも毎年するぐらいの園芸上手です。実はハーブを育ててみたいと思ったのも彼女に憧れてです。
その姉から、鉢植えセットの鉢には鉢底石は入れない方がよいと言われました。本当にそうでしょうか。もしそうなら、今から植え替えた方がよいでしょうか。植え付けて10日ほどです。
(愛知県 I様)
A:ご質問ありがとうございました。また、早速に鉢植えセット使っていただき、ありがとうございました。
お姉様がおっしゃるように、鉢植えセットの鉢(スリット鉢といいます)は、根がスムーズに伸びていくために鉢のサイドに溝が作られています。ですので、本来は鉢底石を入れないで使うのが正しい使い方で、スリット鉢の本来の特性が活かせます。ただ、植え付けて10日というと、ちょうど根付き始めた頃です。少なくとも今は植え替えは避けた方が良いでしょう。
この初心者用鉢植えセットを試作した時、最初は鉢底石はありませんでした。実際その方が、鉢植え作業も一段階少なくなり、より簡単になります。ただ、実際に初心者の方に試していただいた時、「鉢底石はなくてもいいんですか?」とか、「スリットから土が流れ落ちそうです」との感想を多くいただきました。
また、ごく一般的な鉢植えでは、水はけなどの点から鉢底石を敷く場合が多いです。そういったこともあり、初心者の方が基本的な鉢植えの方法を学ぶという鉢植えセットの目的を考えるとやはり鉢底石を加える方がよいと判断しました。
また、初心者用鉢植えセットにスリット鉢を採用する際に重視したのは、他の候補の鉢と比べ、品質と価格のバランスがよいこと、長く使われていてデザインに変更がないこと、軽量・柔らかくて割れにくいこと、広く流通していて鉢植えセットを試したお客様がまた鉢植えを作ろうと思った時に手に入れやすいことなどの点です。
スリット鉢を設計された方には申し訳ないのですが、スリットによる根の成長についてはそれほど重要視しませんでした。また、軽さや柔らかさは、鉢植えセットの製作をお願いしているNPOこだまさんの通所者さんの作業の安全のためにも大いに役立っています。
あわせて、ハーブの種類によっては根が加湿になることを嫌う種類も多いですから、高温多湿の日本の夏を乗り越えさせるためには鉢底石を入れることはプラスの影響も決して少なくないと思われます。
また、当店でも経験しておりますし、お客さまからも報告がありましたが、スリットから土が流れ落ちると、ポケットのような構造になり、そこがナメクジのすみかとなりやすいようです。暗く湿って、すぐ上に餌場がある環境で天敵からも守られやすい、ナメクジにとっては快適な場所となります。ナメクジが多くいる場所では、スリットの高さまで鉢底石を入れるとかなり防ぐことができます。
I様も鉢植えセットで基本的な鉢植えの方法を学ばれて、育て方も身についたら、次は是非鉢底石を使わずにスリット鉢で鉢植えを育ててみてください。スリット鉢の特性を生かした根の成育がわかると思います。タイムが大きくなって、次回鉢のサイズを大きくして植え替える時でもよいでしょう。
お姉様、さすがオープンガーデンをされるとあって、よくご存知でいらっしゃいますね。近くに素敵なお姉様がいらっしゃっていいですね。いろいろ教えてもらってください。植物を育てる際にもなにかと心強いと思います。