怖がる必要はありません
まず最初に、このページは、すでにハーブや植物を育てていて、すでにベニフキノメイガの被害に遭っている方を対象としています。
もちろん、予備知識として知っておくことは悪いことではないと思います。でも、被害に遭っていない人が必要以上に恐れてしまったり、まだハーブを育てたこともない人が、このページを見てハーブを育てること自体を躊躇してしまうことはあまり望ましくありません。
ベニフキノメイガがついたからといって、すぐにハーブが枯れるわけではありません。時期が過ぎるといつのまにかいなくなってしまうこともよくあります。
早めに被害をみつけて、原因を見つけ、早めに対応することが一番です。そのためにもベニフキノメイガをよく知り、日々観察をすることが大事です。
あまり知られていない名前
「ベニフキノメイガ」・・・アブラムシやヨトウムシ、ナメクジなどの害虫に比べるとあまりなじみのない名前なので、どうして「初心者のための〜」に紹介されているか不思議に思われるかもしれません。
ある程度経験のある方なら、写真を見ていただければ、「ああ、あれか」とわかってもらいやすいのも「ベニフキノメイガ」です。もちろん、「ベニフキノメイガ」と聞いてすぐわかるような方は、相当しっかりハーブを育ててこられた方でしょう。
慣れてくると見つけやすいですが、初心者の方にはそもそも害虫の被害かどうかがわかりにくいという意味からもこのページで紹介することにいたしました。
わかりにくい被害
先日、大阪府のT様から次のようなご相談メールをいただきました。
「初めて育てるローズマリーなので、どんなもんなのか全くわからない状態でのスタートでしたが、何とか元気に育ってくれてるのかなぁと思っていましたが…
中略
今日じっくりと葉っぱを観察したところ、所々黒くなっている??これは枯れてるのでしょうか?何だか蜘蛛の糸のようなのが絡んでいたりしてちょっと怪しい感じです(⌒-⌒; )
是非アドバイスお願い致しますm(_ _)m」
最初メールを拝見したときに、一時的な水切れか、水のやりすぎが原因ではないかとも思いましたが、「蜘蛛の糸」という言葉が引っかかりました。また、ちょうど梅雨に入ったころから、お盆頃までは例年ベニフキノメイガの被害相談が多い時期です。そこで、後ほど写真を送っていただくようお願いいたしました。
栽培担当にも見せたところ、やはりベニフキノメイガの幼虫が原因だという結論になりました。
シソ科のハーブが被害に遭いやすい
ベニフキノメイガの幼虫の食害は、当店の圃場でもよく見られます。細長い芋虫タイプの幼虫です。
ただ、ものすごく困るというほどではありません。初期に見つければそれほど被害が広がらないうちに対策できます。
ただ、問題は、シソ科のハーブを狙って食害するということ。
ハーブといえば「シソ科」と言われるほど、ハーブの仲間にはシソ科の植物が多くあります。
ラベンダー、ローズマリー、タイム、ミント、セイジ、レモンバーム、オレガノ、バジル・・・
多くの代表的なハーブが被害に遭う可能性があると言っても過言ではありません。
実際の被害
特に初めて食害されると、T様のように原因がわからず、水切れではないかと、更に水を与えることになり、なおさら柔らかい葉が育ち、更に食害が進むという悪循環におちいることがあります。
ハーブによっては葉が焦げたように丸まったりするので、病気かもというお問い合わせをいただくこともよくあります。
また、幼虫が大きくなると、食害する量も比例して増えるため、いつの間にか丸坊主になっていたというケースも起こり得ます。
ただ、基本的には食害のみで、病気などの原因になることは稀ですので、幼虫を駆除すれば、元の通りの成長に戻ります。葉がすっかり食べられてしまったタイムでも、その後また新芽を伸ばして元の姿に戻ることもよくあります。
一株に大量発生することはあまりないため、地植えなどで大株になったものは、食害されてもそれほど被害はありませんが、小さい苗や鉢植えなどの場合は、一匹でも被害が目立つことがあります。
バジルも下記の写真のように食害で穴が開きます。
被害に遭いやすい場所
柔らかい葉がよく狙われます。特に斑入りのタイムなどは標的になりやすいようです。
逆に、硬く丈夫に育った葉には卵を産み付けにくいのか、被害も少ないです。ラベンダーはどちらかといえば被害を受けにくいですが、それでも柔らかい新芽部分が食害されることが時々あります。
発生時期
主な発生時期は、初夏から夏ですが、地域によっては秋にも被害を受ける場合があります。ただ、当店の圃場で様子を見る限りでは、長期間被害が続くことはありません。せいぜいピークは2週間ぐらい。それを過ぎると次第に見なくなってきますから、発生した時だけ注意するぐらいでも大丈夫です。
発生原因をよく考えましょう
いろいろなハーブを育てている人ならば、同じ種類でもベニフキノメイガの被害にあうものと、そうでないものがあることに気づくかもしれません。
成虫も、よく観察して卵を産む場所を決めるようで、柔らかい葉を持つものや、軟弱に育ったもの、柔らかい新芽がある種類などを選んで産卵しているようで
他の病害虫対策としても基本ですが、必要十分な日当たり、水や肥料の与え過ぎを控え、丈夫に育てることが大事です。
ベニフキノメイガの天敵
天敵としてハチやクモ、カマキリなどが知られていますが、糸や葉に包まれているため、天敵を防ぐ力も強いようです。
対策
とにかく早く見つけることが肝心です。
目印としては、葉の変色や、細い糸、フン、巻いた葉などです。日々の観察が大事です。柔らかい枝や葉、斑入りの葉や新芽が多いシソ科のハーブを重点的にチェックしましょう。
また、水切れや蒸れなどの場合は、株の全体に変化が見られることが多いですが、ベニフキノメイガの場合は、他は元気なのに、一部の枝だけに不調が現れることがよくあります。
見つけたら捕殺しましょう。逃げる際の動きは思ったよりも速いので、慣れないと下に落ちて逃げてしまうことがあります。
毒やトゲはありません。
成虫が卵を産み付けないように細かいネットなどで物理的に覆うのも有効ですが、よほど被害が甚大でなければそこまでしなくても大丈夫でしょう。
ちなみに、成虫は爪よりもちいさな蛾です。見た目は茶色の二等辺三角形です。水やりをしたときなどに、葉の裏からパタパタと飛び出して、サッと近くの葉の裏に隠れるので見つけにくいです。 成虫は、蜘蛛の巣にもかかりやすいようですので、邪魔にならない場所の蜘蛛の巣は残しておくのも良いかもしれません。
まとめ
一番気をつけたいのは、幼虫が小さいうちには、ベニフキノメイガが原因であることがわからずに、間違った対処をしてしまうことです。
いちど被害についてわかるようになれば、決しておそれなくても良い害虫ですし、被害も最小限で抑えることができます。
お問い合わせいただいたT様にも再度詳しく説明差し上げたところ、何匹も見つかったそうです。原因がわかると一安心ですね。
いかがでしたでしょうか。もし、まだ良く分からないことがあるという方のためには初心者の方専用ホットラインをご準備いたしております。ご質問等お気軽にお寄せください。