土作りには楽しみと悩みがいっぱい
ハーブがうまく育たないとき、「もしかして土が悪いのだろうか?」と思ったことはありませんか?自分が育てている土が本当に良いかどうかは、園芸を楽しむ人にとっては永遠の悩みであり、テーマでもあります。いい土で、ハーブが思うように育つならばこれほど幸せなこともありません。
ちなみに、ハーブを鉢に植えるとき、皆様はどんな土をお使いですか?さすがにお庭や畑の土をそのままと言うのはよくないですね。雑草の種もたくさん入っていますから、ハーブと一緒に雑草も育てているようなものです。
ならば、なにかしら購入した土を使うのが一般的。では、それは園芸店で売れている「ハーブの土」?リーズナブルな「花と野菜の土」?それとも当店の「オリジナルハーブ用土」?
すでに配合された土を使うのは、比較的手軽ですし、心配もすくないことでしょう。その一方、自分で好みの土を配合して使うというのも園芸の一つの楽しみです。よりよく育てるためにも是非一度チャレンジしてみられると良いでしょう。
土の配合はひとりひとり違うもの
さて、育てるのが上手な人に土の配合について尋ねると、必ず一家言をお持ちです。 「硬質の赤玉5割に、○○産の腐葉土を半年寝かせたものを3割、肥料は××と△△を半々にまぜなきゃダメだ」 などと言われます。でも、別の人に尋ねると、「赤玉はダメ!、鹿沼じゃなきゃ!」と答えが返ってきます。ハーブの本やWebをみると、また違ったことが書いてあってますます混乱するばかり。一体何が正しいのでしょう。
一方で、土の配合は教えてくれない人もいらっしいます。もちろん、出し惜しみして教えないのかもしれません。でも、実際の所、「その人の配合でうまくいくのはその人のお庭や植物だけ」ということを知っているので、教えないのです。つまり、「その配合通りにしてもうまくいかない」こともよくあるのです。とはいえ、思いがけないアイディアや素材を教えてもらえることもありますから、近くに「達人」がいる場合は一度尋ねてみるのはとても良いことだと思います。
結局、最高の土は自分で作るのが正解です。育てる人が100人いれば最適な土も100種類。よく、「十人十色」と言いますが、「十人十土」ともいえるでしょう。土のブレンドは、とても奥が深く、実はこのように書いている私もいつも試行錯誤しています。でも、自分がブレンドした土でうまく育った時の嬉しさはまた格別です。 もちろん、ブレンドだけでなくて、市販の土に加える素材として、土を知っておくのも損ではありません。この機会に土について学んでみましょう。
土の種類を知ろう
「さあ、土を混ぜて作ってみよう!」と思って、園芸店やホームセンターに行っても、並んでいる土の種類に頭の中が混乱するかもしれません。 混ぜる土は、1種類?、2種類?、それとも3種類?腐葉土も何種類もあるし、赤玉土は大粒?小粒?それとも中粒?・・・。お店の店頭で迷わないよう、ショッピングに出かける前に、まず基本的なところを押さえておきましょう。
以下、少し多い種類の土を紹介しますが、もちろん、これら全てをそろえなければという意味ではありませんのでご安心ください。
ベースになる土
まずは、土をブレンドする時に一番基本になる土です。いくつか種類がありますが、使ってみた性質はかなり違いますので、使ってみて自分に合うものを選ぶのが良いでしょう。いずれも肥料分はありません。
- 赤玉土
- 粒状で、大粒、中粒、小粒などがあります。水はけや水持ち、肥料を保持する力もありますが、長く使っていると崩れて細かくなります。写真は小粒です。
- 鹿沼土
- 粒状で、こちらも粒の大きさは様々です。硬くてつぶれにくく、水はけはとても良いです。水持ちや肥料の持ちは赤玉土に少し劣ります。
- 日向土
- 同じく粒状ですが、とても軽くて固め、水はけはとてもよいですが、水持ちや肥料持ちは若干劣り気味です。特に水はけを好むものにはよいかもしれません。
- 上の3つは、メーカーや産地、品質も多数あり、価格も高いものから安いものまでありますが、あまり安いものは避けた方が安心でしょう。粒のサイズも様々ですが、どれがいいという感じではありません。当店は使いやすいので小粒をよく使いますが、中粒や大粒で上手に育てておられる方もたくさんいらっしゃいます。結局のところ、上でも述べたように、その人の栽培スタイルに合っているかどうかだと思います。
- マサ土
- 山土とか、山砂、真砂土など色々な呼び方があり、また原産地によって桐生砂などと呼ばれるものもあります。基本的に大きめの砂ですが、粒の大きさは様々で、大きい粒ほど水はけはよくなり、細かい粒の場合はやや固まりやすく、水はけを悪くすることもあります。一般に重いですが、地元で産出されるものが流通している場合が多く、比較的安価なものが多いです。庭の造成などに大量に使われるので、地域によっては2トントラック一杯何千円という価格で手に入ることもあります。肥料を保持する力はあまりありません。たくさん土がいる場合や、花壇などを作る時には価格の面でお薦めです。また、川から採取された川砂もあります。
排水性、通気性、水持ちなどを調整する土
- 腐葉土
- 堆積した落ち葉が分解して、細かくなったものです。水はけと通気性に優れていますが、水持ちはそれほどありません。肥料分は少なく、むしろ土の中の微生物のすみか、働きを促進する役割と考えると良いでしょう。産地や品質そして値段も様々です。上記写真のように針葉樹の枝や葉が多いものは避けるのがよいでしょう。また、この写真のようにあまりべたべたしたものや、におってみて臭さを感じるものもお薦めできません。
- パーライト
- パーライトは水はけと通気性を改善します。肥料分はありません。発泡性で軽いもの、硬質で砕けにくいものなどあります。土を軽くするのにはとても使いやすい素材です。パーライトの非常に細かいものは水持ちがよくなります。
- バーミキュライト
- 層状になったキラキラした軽い石です。隙間が多く、保水性もあるので、種まきなどにも使います。非常に軽く、水はけと通気性を良くします。肥料分はありません。
- ピートモス
- 水苔が堆積して出来た繊維質の多い土で、フワフワとして軽い安価な素材です。保水性は高いですが、一度乾くと水をはじき、吸い込みにくくなることもあります。また酸性度が高く、多用するとphのバランスが悪くなることもあります。一方で酸性の土を好むブルーベリーを育てる時には欠かせない素材でもあります。近年はココナッツの殻から作られた似たような素材のココナッツピートも流通しています。こちらはより中性に近い性質です。いずれも肥料分はほとんどありません。 ココナッツピート
肥料分
肥料には元肥(あらかじめ土と混ぜる)として使う固形肥料と、追肥として使う液体肥料がありますが、元肥用の固形肥料について説明します。 肥料は、それこそ多種多様、色々なメーカーから様々な製品が毎年発売されています。大きくわけると化学肥料と有機肥料です。性質が安定していて使用量も目安が分かりやすい化学肥料と、使うのには少し慣れが必要で保存にもやや気を使う有機肥料、どちらを使うかは頭を悩ませることでしょう。
もし植物を育てること自体初めてで、失敗したくないという場合は化学肥料のほうが使いやすいでしょう。「ハーブ用」などの専用品でなくても、幅広い植物に使える種類が価格もリーズナブルです。N-P-K(窒素、リン酸、カリ)の比が書かれていことでよけいに迷うかもしれません。慣れないうちは、N-P-Kの数字が同等程度の肥料を選んでみましょう。さらに、それぞれの数値が10前後だと与え過ぎなどのトラブルも少ないでしょう。NPKについて詳しくは、三大要素 N−P−Kって、なぁに? [ガーデニング・園芸] All Aboutなどを参考にしてみましょう。また、使う量は、記載されている目安よりもやや控えめぐらいでちょうど良い場合が多いです。※残念ながら当店は普段、化学肥料を使い慣れていないため、化学肥料については、より詳細な説明ができません。使い慣れている方や、ネットなどの情報も参考にしてみましょう。
ある程度栽培になれてきたら、有機肥料にも挑戦してみてはいかがでしょうか。有機肥料についてはそれこそ一冊の本になっても説明しきれないぐらい奥が深いものです。牛糞、鶏糞、油かす、魚粉、ぬか、馬糞など、植物性のもの、動物性のものなどたくさんあります。また、これらの有機肥料をさらに発酵させた発酵肥料も近年よく使われています。比較的ハーブに使いやすいものに、牛糞と木の皮やチップを混ぜて発酵させたバーク堆肥、また、当店でも利用している微生物肥料があります。いずれも効きが穏やかで比較的多めに入れても大丈夫ですが、パッケージの説明に従うようにしましょう。微生物肥料の場合は、全体に対して体積比で5~10%混ぜると良いでしょう。 バーク堆肥
その他
- 石灰
- ハーブの土作りというとき、かならず登場する石灰。ハーブの原産地が石灰岩土壌が多いというので「石灰を加え・・・」となるようですが、ハーブの原産地は世界各地、酸性土壌が好きな種類もありますし、少々の酸性で育たないという種類は稀といえるでしょう。ホウレンソウを育てる時のように、絶対に石灰を加えなければならないものは非常に少ないように思います。ただ、酸性の高いピートモスを大量に使うようなら、石灰を入れるべきかもしれません。粉状の石灰は土を固めてしまう場合もあります。また、混ぜてすぐには使わない方が良いですから、それらが心配な場合は、すぐに使えるカキ殻などの有機石灰を使うと良いでしょう。 カキ殻石灰
- 炭
- 土をブレンドする時に、以前からよくすすめられる素材として炭があります。木炭、竹炭など、素材も色々ですが、土に混ぜる場合によく使われるのはもみ殻を炭化させたもみ殻くん炭というものが一般的です。炭の持つ多孔質という性質のため、空気や水分を蓄え、微生物のすみかを提供する働きもあります。当店では、phの調整のためにアルカリ性が高めのそば殻を炭化させたそば殻くん炭も使用しています。 もみ殻くん炭 そば殻くん炭
- その他
- 土に混ぜやすい粗大有機物として、もみ殻や、そば殻、おがくず、朽ちた椎茸のほだ木などを使うという場合もあります。増量、水はけの改善、また微生物のすみかとしての働きがあります。手に入りやすいようでしたら活用してみましょう。
以上、大まかに素材となる用土について説明いたしました。次回「ハーブ用土のブレンド(その2)」では実際のブレンドについてご説明いたします。
いかがでしたでしょうか。もし、まだ良く分からないことがあるという方のためには初心者の方専用ホットラインをご準備いたしております。ご質問等お気軽にお寄せください。