目次

ハーブを植える時期についての誤解

定植

ハーブは春から育てるもの?

ハーブを育てる前に知っておきたいことでも触れておりますが、「ハーブは春からでないと育たない」、または、「ハーブは春の時期に栽培をはじめるもの」という考えがまだ深く残っているようです。

数十年前、ハーブが一般に紹介された当初、「ハーブは春〜初夏」から植えて育てるものと紹介されることが多くありました。

当時はまだ日本に紹介されたハーブも種類が限られていました。しかも種子から育てる種類が多かったこともあり、春から初夏の時期に育て始めるというのが定着したのも十分うなづけます。

もちろん、年間を通して、ガーデニングをスタートする時期としては春から初夏であることも多いことから、「ハーブは春から初夏に栽培する」とされるのも良くわかります。

この時期は、植物が一番勢い良く成長する時期でもあり、育てていて楽しい時期です。また、野菜と一緒に育てることも多いハーブなので、トマトやキュウリなど夏野菜と同時期に植えてスタートしやすいという意味もあります。

そのため、メディアでもハーブの特集が組まれるのは春〜初夏であることが多く、それに合わせて育苗農家も苗を栽培し、店頭に並びます。それでなおさら「ハーブは春〜初夏」と思われることが多いようです。

種類によって適切な時期に植えるのがベスト

近年ようやく、春以外の時期からもハーブを栽培することができると、一部で認識され始めました。また、ハーブをある程度長く育てている人は、経験上それぞれの環境や種類に応じて、しかるべき時期から栽培をスタートしておられます。

もちろん、寒さに弱く、夏に向かって成長するバジルなどは例外ですが、寒さに強いハーブなどはむしろ秋から植えるほうがうまくいく場合も多いものです。特に、暑さに弱い種類などは近年の暑い夏越し対策として秋植えから冬植えのほうがむしろ安定して育ちます。

地域や環境による適期の違い

育て始めるのに適した時期は、地域や環境にもよります。例えば、ここ島根県でも、当店がある県東部地域の松江市と比べると、西部の益田市あたりではずいぶん寒さや雪の量も違います。秋に植えて冬越しできる種類も違ってきます。

また、県南部の中国山地沿いでは、冬がマイナス10度以下になる地域もあります。標高が高ければ、寒さに強いと言われる種類でも、春から植える方が望ましいこともありますし、逆に夏に弱い種類でも、春から初夏にかけて植えても問題なかったという例もありました。そのため、「このハーブはこの時期に植えましょう」と断言するのはとても難しいことです。

きっとあなたのお住まいの地域でも、沿岸部や海岸部、標高や地形によって気候が大きく異なる場所があることを想像していただければこの意味がよくわかるでしょう。

島根県地図

非常に環境の違う3カ所をまとめて「島根県では・・・」とは言いにくい

最終的には、育てる種類や育てる環境をよく考えて栽培をスタートする時期を決めるのがベストです。また、お近くでハーブを育てている人がいれば、ぜひどの時期に植えるとうまくいくのかを尋ねてみましょう。本や雑誌、インターネットにもないような情報、当店も知らないようなその地域だけのノウハウを教えてもらえることでしょう。

発売中の苗について

当店がハーブの苗を発売する際には、なるべくその季節に植えつけやすく栽培しやすい種類を紹介するようにしております。発売中の苗のリストの中に載せてある種類は、比較的現時点で植え付けして楽しみやすいものです。

また、特に新苗のリストにあるものは、育苗できたばかりで、植え付けに特に適しています。

(※もちろん、地域によってはその時期では栽培が難しい種類もあります。よくわからない場合は、本ページ下部の「ご質問・ご相談直通TEL」または、お問い合わせのページからご質問をお送りください。)

それぞれの季節・環境と育てるのに適したハーブの種類・メリット・デメリット

便宜上春、初夏、夏、秋、冬と分けましたが、同じ3月でも、東京の3月と北海道の3月、沖縄の3月では全く気温も違いますし、雨や風、雪などの影響によっても環境に大きな違いがでてきます。そのため、○月頃とか、気温○○℃という目安があまり当てになりません。そのため、ごく大まかな分け方にせざるをえません。ご了承ください。

春植え

寒さが和らぎ、徐々に気温が上がっていく時期

気温の上昇とともに植物が勢い良く伸び始め、ハーブを育て始めるのにも楽しい時期です。

春に植える主な種類

多くのハーブを植えることができます。寒さに強く、夏までに開花する一年草(ジャーマンカモミールボリジディルコリアンダー)などは極力早めに植えると良いでしょう。

ジャーマンカモミール

ハーブティーが美味しいジャーマンカモミールは春早めに定植しましょう。暖地では秋〜冬植えも大株に育ちます

また、夏に高温多湿になる地域では、イングリッシュラベンダーなど夏に弱い種類のラベンダーなども早めに植えると良いでしょう。気温がある程度上がってきたら少し寒さに弱いニオイゼラニウムなどを植えても心配が少ないです。

ローズゼラニウム

代表的なニオイゼラニウムのローズゼラニウム。春に植えて、初夏までに咲きます。

ただ、最低気温が15度以上にならないと育ちにくい夏のハーブ(スイートバジルレモングラスレモンヴァーベナなど)は気温が高くならないと活着しにくいので、Tシャツになりたい日が増えてくるぐらいまでは待ったほうが良いでしょう。

春に植えるメリット

ハーブもよく成長する時期なので、日々の成長が目に見えやすい季節です。また、苗が一般の園芸店などにも並び始めるので手に入りやすいです。種子をまいても発芽しやすい季節です。

春に植えるデメリット

勢い良く伸び始めるぶん、柔らかく育ちやすく、アブラムシなどの害に悩まされることがあります(「ハーブのアブラムシ対策」参照)。バジルなど、急いで早く植えすぎると寒さで傷むことがあります。

初夏植え

八重桜も終わり、Tシャツになりたい日が増えてくる時期〜梅雨ごろ

気温も高くなり、ガーデニングが行いやすい時期です。

初夏に植える主な種類

スイートバジル

バジルの定植はTシャツになりたいぐらいの温度になってから

気温が低いと育たない夏のハーブ類(バジルレモングラスレモンヴァーベナなど)、秋に開花するセイジやサルビアの仲間、寒冷地でもニオイゼラニウムなどが安心して育てられます。

マートル

花が可愛らしいマートル

また、梅雨に掛けてやや寒さに弱い常緑の樹木ハーブ(マートル月桂樹ティートゥリーユーカリなど)もおすすめです。また、暑さに強い多年草ハーブもおすすめです。

初夏に植えるメリット

植物の成長が著しい時期なので、バジルなどは少し遅れて植えてもすぐに追いつくことができます。また、植えてから比較的短期間で収穫がスタートできます。苗も比較的手に入れやすいです。

初夏に植えるデメリット

高温多湿に弱い種類は定植がやや難しいです。梅雨時期には根腐れの心配があります。湿度が高くなると、うどん粉病などの害が出始めます。畑や庭では雑草対策が必要になってきます。

夏植え

梅雨時期後半から真夏を超えて、半袖で過ごせる時期ぐらいまで

近年の猛暑は、植物を育てるのに厳しい時期です。気温が高いため、成長は良いですが、暑さによる生育障害にも気をつける必要があります。寒冷地ではむしろ多くのハーブが一番楽しめる時期です。

夏に植える主な種類

バジルやレモングラスなど、熱帯原産のハーブは育てながら使える時期です。

レモングラス

レモングラスは気温が高いとよく育ちます

また、秋に開花する暑さに強いハーブ類も植えるのに適しています。夏の終わりに早く気温が下がり始める地域では、早めに秋植えのものを植えると良いでしょう。

メキシカンブッシュセイジ

メキシカンブッシュセイジ。秋咲きのセイジ類は暑さに強いので夏からでも大丈夫。

夏に植えるメリット

高温多湿を好む種類は非常によく育ち、収穫も繰り返し可能です。

夏に植えるデメリット

特に容器栽培では水やりが大変な時期です。地植えでも高温乾燥に注意する必要があります。また、夏休み、お盆などの帰省時期と重なり、管理が難しい季節です。暑さに弱い種類は休眠して育たないことも多いので、涼しくなってから植えるほうが安心です。台風などの心配もある季節です。

秋植え

気温が下がり始め、長袖が欲しくなり、霜が降り始める頃まで

ハーブがゆっくり育つ時期です。極端な寒冷地以外では植付けに適しています。

秋に植える主な種類

一般的な多年草のハーブは大抵秋に植え付けることができます。秋遅くから春に花が咲くローズマリーもお勧めです。

暖地では、ラベンダーやタイムなど、暑さに弱い種類をこの時期から植えることで、次の夏までに株を充実させることができます。

イングリッシュラベンダー

暑さに弱いイングリッシュラベンダーを暖地で植えるなら秋がおすすめ

そのほか、ジャーマンカモミールやボリジ、コリアンダーなど、寒さに比較的強い一年草を秋植えすることで、春の収穫量を増やすことができます。

コリアンダー

コリアンダー(パクチー)を大量に収穫したいなら、秋〜冬植えが成功の秘訣

秋に植えるメリット

病害虫の心配が少なく、しっかりとした株を育てることができます。草取りなどの手間が比較的少ないです(地域にもよります)。地植えで大株に育てたい場合には特におすすめです。

秋に植えるデメリット

成長がゆっくりなため、伸びが目に見えにくく、また収穫も行いにくい時期です。苗物の流通量が少ないため、専門店以外では手に入れにくいことがあります。暖地以外では、寒さに弱い種類は鉢植えなどで防寒するか、春から植えざるを得ないです。台風被害もまだ心配が必要です。

冬植え

おおよそ、木々が落葉し、植物が成長を止める頃から、翌春植物が活動を始める頃まで

多くのハーブが休眠し、落葉したり、地上部がなくなったり、成長を止めます。そのぶん、寒さに強い種類は定植に向いています。

冬に植える主な種類

土が凍らない地域では、寒さに強い種類は定植が可能です。根雪にならない地域では秋と同様、寒さに比較的強い一年草の植え付けも可能です。落葉性の樹木類ハーブも定植にはおすすめですし、冬に花が咲くローズマリーも、寒冷地以外では楽しむことができます。

ローズマリー

秋遅くから春にかけて花が咲くローズマリー。冬に楽しめるハーブの一つ。

スミレの仲間など、春に開花する種類も植えつけできます。逆に、ニオイゼラニウムなど寒さに弱い種類を室内で楽しむこともできます。

ニオイスミレ

春に咲くニオイスミレ

冬に植えるメリット

病害虫の心配が少なく、しっかりとした株を育てることができます。特に春に成長・開花する種類は、春から植えるよりも収量が増えやすいです。

冬に植えるデメリット

成長がほとんどないため、伸びが目に見えにくい季節です。苗物の流通量が限られているため、専門店以外では手に入れにくいです。寒冷地や根雪になる地域では植え付けが困難です。積雪のある地域では雪による枝折れなどの心配があります。

まとめ

このように、植える種類と季節は様々な要因によって変わってきます。

「この季節でないと難しい」という種類もあれば、ローズマリーのように「結構どの季節でも植えられる」という種類もあります。

ただ、それよりも一番よいタイミングというのは、「今植えてみたい!」という育てる人の気持ちが強い時です。育てる種類の性質を理解して工夫すれば、幅広い季節で植えることが可能ですので、まずは一歩を踏み出してみましょう。

初めて植える方でも失敗なく植え付けができる「栽培初心者向けハーブ鉢植えセット」もおすすめです。栽培初心者向けハーブ鉢植えセット


いかがでしたでしょうか。もし、まだ良く分からないことがあるという方のためには初心者の方専用ホットラインをご準備いたしております。ご質問等お気軽にお寄せください。

ホットライン