鉢のサイズで成長に違いがでるのでしょうか?
鉢のサイズ選びで、最適な鉢のサイズについて考えてみました。でも、本当に鉢の大きさで育ちかたに違いがでてくるものなのでしょうか。実際に育っていく様子を追いつつ、収穫量を比べてみました。
バジルで生長の違いを調べてみる
生長の比較をする対象はスイートバジルにしてみました。成長が速くて比較的短時間で結果が分かりやすいこと、ローズマリーやタイムなどに比べると収量(重量)が多めで比較しやすい点などで、バジルを選びました。
育てかたと収穫方法
- 苗は9cmポット苗を使用
- 鉢は15cm(5号鉢)と、24cm(8号鉢)のスリット鉢で比較
- 用土はオリジナルハーブ用土を使用
- 追肥はしない
- 午前中は日が当り、午後はやや日陰になる場所で育てる
- 水やりは乾いたら行う
- 収穫は程よい大きさに育った時点で同時期に行う
- 収穫する(剪定する)位置は、次に伸びやすそうな新芽の上で行う
- 収量は1g単位ではかることができるスケールで計測する
以上の基準で栽培、計測しました
まずは定植(6月30日)
苗と鉢、そして用土を準備しました。夏でじゃんじゃん水をやることになりそうなので根ぐされは避けたいところ、少量ですが鉢底石もいれます。
こう見ると、土の量に大きな差がありますね。24cm鉢ですと4.5リットルも必要になりますが15cm鉢ならおよそ1リットルですみます。
苗はちょうど揃ったものがありませんでした。ハンデはつけるべきではありませんが、15cm鉢には少し大きめの株を植えることにしました(栽培時期は同じく、根のコンディションも同等です)。
植え付け完了しました。
水をしっかり与えて、まずは並べてスタート時の記念撮影。こうして見ると小さい鉢のほうがかなり苗が大きく見えます。
2週間後、ずいぶん成長しました(7月14日)
梅雨明け後の本格的な夏の日差しを受けて、バジルは順調に生長を続けます。2週間前と比べると、草丈も、葉の数や大きさもずいぶん違ってきました。特に15cmポットのほうの勢いは目覚ましく、草丈だけを見ると24cmポットをしのぐ感じです。そろそろ収穫しても良さそうです。
24cmポットのほうは一部がかじられてしまいました(バッタでしょうか)。
収穫は基準に従って、次に伸びそうな新芽の上で行います。あまりたくさん収穫してしまうと、次に伸びる力が減ってしまいますから程々に。
さて結果は・・・
15cm鉢の収穫量は、6gでした。
24cm鉢の収穫量は、11gとなりました。見た目はそれほど変わりませんが、24cm鉢のほうがみずみずしい感じで、より重たかった感じです。
収穫後はこのような感じです。少し葉を残しすぎたかもしれませんが、まだ先は長いです。今後の成長のため、少し余裕をもって控えめな収穫です。
定植後ひと月(7月28日)
夏の一番暑い時期を迎え、バジルも絶好調、枝分かれも順調で、2週間前に収穫したことが分からないぐらい良く伸びました。
ただ、15cmポットのほうはやや葉が小さめで、葉色も薄くなってきました。おそらく鉢が小さいために水がやや切れやすいのでしょう。一応しおれたりはしないように水やりはしていますが、小さい鉢は大きい鉢と比較するとどうしても水切れの危険性は高まります。
さて、収穫です。
15cm鉢の収穫量は、9gでした。
24cm鉢の収穫量は、29gでした。今回はだいぶ差がつきました。つやつやとした葉をみていると、「今夜、どうやって食べようかな・・・?」と想像が膨らみます。
収穫後はこのような感じです。15cm鉢はすこしかわいそうな感じです。本当ならここで鉢サイズをアップしたり、さもなくば追肥をしてやりたいところです。
定植後40日(8月11日)
まだまだ続く暑さですが、バジルは元気です。ラベンダーやタイムの苗はちょっとしんどそうなのにバジルは疲れた様子も見せず成長しています。ただ、15cm鉢のほうは固めの葉が多くなってきました。根がつまり始めているのかもしれません。
さて、収穫量はどうでしょう。
15cm鉢の収穫量は、頑張りましたが4gがせいぜいでした。これ以上収穫するとその後が危なそうです。葉も硬めで「サラダにはちょっと・・・」と言った感じです。
24cm鉢の収穫量は、27gでした。今回も順調に収穫できています。葉の状態もGood。美味しそうです。
定植後54日(8月24日)
8月も終わりが近づいてきました。ようやく暑さも一段落というところです。ただ、お盆の後、15cm鉢のほうが水切れしかけてしまうというアクシデントが起こりました。幸い、極端にしおれる前に水を与えることができて、大丈夫だったのですが、もう少し遅れていたら、この実験も終わりになってしまうところでした。栽培はビニールハウスの中ですので、強い風は防げますが、屋外よりやや気温が高めです。注意してはおりましたが、最初の頃と違って、すこし気が緩んでいたようです。
そのためもあり、15cm鉢のほうはやや元気が無い感じは否めません。また、バジルのような一年草は急に乾燥させると、花をつけようとし始めるようで、葉が硬くなりやすくなります。夏前でもそういった傾向がありますので注意したいところです。
今回、同じように水やりをしていた24cm鉢のほうはまだ余裕がありました。夏はお盆など、家を空ける機会も多くなりますから、小さい鉢の管理は特に気を付けたいところです。
さて、いよいよ計量です。
15cm鉢の収穫量は、それでも奮闘して11g。でも、少し古い葉も混じっています。ダウンしかけた後にしてはよく頑張ってくれています。
24cm鉢の収穫量は、今回も安定しています。27gでした。
定植後2ヶ月(8月31日)
いよいよ8月も終わりです。「バジルの季節・夏も終わり」といった感じがします。切りが良いところで今日の計量をもって最終とします。
さすがに、どちらの鉢もくたびれが見えます。15cm鉢は言うまでもないですが、24cm鉢も葉が小さく、硬くなってきました。15cm鉢はあまり成長も進んでいない感じです。さて、収穫ができるでしょうか。
15cm鉢の収穫量は、なんとか取れる葉を収穫しても3g。
24cm鉢の収穫量も10gだけ。さすがに肥料が切れてきたのでしょう。
収穫した後の様子です。「お疲れさまでした」という感じですね。24cm鉢のほうはまだしばらく収穫ができそうですが。
ついでに、根の様子もチェックしてみました。
15cmのほうは、根がもうぎっしり。根が茶色にこそなっていませんが、これ以上のびようがない状態です。24cmのほうはまだ余裕がある感じです。
まとめ
およそ2ヶ月間育てて、15cm鉢は合計で32グラム、24cm鉢は、105グラムの収穫がありました。定期的に収穫するのではなく、育てながら週末当りに(そろそろ食べれるかな?)と育ちかたを見ながら収穫する感じで行いましたので、お家で使うサイクルに近くなったのではと思います。肥料はそれほど多めではなかったですので、もう少し元肥を増やしたり追肥を行えば、もっと収穫ができたと思われます。ただ、一株をなるべく大きくしようと育てるよりも、複数株を育てるほうがむしろ楽だと思われます。目安としては、家族一人当たりに1株育てるとあまり不足を感じることがありません。もし、サラダなどでどんどん使いたいという場合はもう少し株数を増やして、順繰りに収穫するのもよいでしょう。
収穫量の変化のグラフは次のようになりました。おおよそ育て始めてひと月目ぐらいにピークが来ますが、鉢のサイズで、その後も収量が安定し続けるかどうかが変わってきています。
(クリックで拡大)また、今回は7月の初めからのスタートとなりましたが、5月ぐらいからですと、気温も低めだったり、梅雨を挟みますからもうすこし成長はゆっくりになると予想されます。そのかわり、秋に涼しくなるまでに期間がありますから、収穫できる期間はもっと長くなるでしょう。
やはり、夏の間に一気に大きくしてたくさん収穫したいバジルを15cm鉢で育てるのは少し大変でした。柔らかい葉で水を消費する量が多いバジルですから、24cm鉢と一緒に育てていても、15cm鉢のほうは、いつも水ぎれしていないか心配しなければいけないのも夏は大変です。できるだけ大きい鉢やプランターなどで育てるほうが、根詰まりの点でも安心だと思います。
ただ、それほど大きくならないタイムや、そんなにたくさん使う必要が無いローズマリーなら、小さめの鉢でゆっくり育てるのも良いですし、はじめから大きな鉢やたくさんの土を用意する必要もありません。とはいえ、鉢のサイズ選びの回で解説しております通り、初心者の場合はなるべく大きめのサイズで育てるほうが失敗は少ないでしょう。
鉢のサイズを決めるのはとても難しいことですが、試行錯誤しつつ、ご自分の環境に合った鉢を見つけるのもまた園芸の楽しみかもしれませんね。
(おことわり)今回の実験は、ある特定の環境と条件で行ったものです。苗の個性もありますし、時期や用土、日当り、風当たりなど、育てる環境によって成長は大きく違ってきます。育てかたも、ごく一般の方が趣味で育てておられる感じに近づくようにある意味やや放任気味で育てました。そのため、同じように育てられても必ずしも同様の結果がでるとは限りません。御了承ねがいます。
いかがでしたでしょうか。もし、まだ良く分からないことがあるという方のためには初心者の方専用ホットラインをご準備いたしております。ご質問等お気軽にお寄せください。