ハーブの苗を定植する時期については、ハーブの苗を植える時期をご参照ください。
ハーブを育てていると、「ああ、この株をこっちの方へ移動させたいなぁ」と思う場面がよくあります。
でも、せっかく根を張って生きている株の事を考えると、移しても大丈夫なのか心配で、結局そのまま・・・。と言う方も多いようです。
ハーブの移植は、正しい方法で行えば決して難しくありません。むしろプラスに働く移植もありますので、タイミングや種類、方法を学んで積極的にチャレンジしてみましょう。
移植する理由
では、そもそも、どうして移植する必要が出てくるのでしょうか。
植物側の事情
まず、しばらく育ててみたけれど、どうもこの場所ではよく育たない、調子が悪いといった場合です。
「ここなら大丈夫」と思って植えてみたのに、思いのほか水はけが悪かった・・・とか、北風が強すぎて葉が傷んでしまい、どうもよく育たないので場所を変えたいということはよくあります。
また、成長しすぎて、その場所では狭くなってしまったり、株の間を狭めに植えたら、間が詰まってしまうこともよくあります。逆に周りが大きくなってしまった関係で他に移さざるを得なくなることもあります。
よくあるパターンですが、春、落葉樹のそばに植えたところ、葉が少ない時期は日当たりが良かったのに、葉が茂ってくるにつれ全然日が当たらなくなってしまった・・・。とか、春と夏では日の当たる場所が違って全く日がささなくなってしまった。という悩みもたくさんの人が経験しておられるようです。
いずれの場合にも、移植したほうがその後良い結果につながりやすいものです。
人間側の事情
一方、わたしたち、人間の事情で移植せざるを得ないこともあります。
「引越しのためにハーブを移植したいのです」という相談を春先になるとよくいただきます。急な場合も多いので結構移植も大仕事になりがちなパターンです。
また、しばらく育てていると、庭や花壇のレイアウトを変えてみたいと思うこともよくあるものです。こんな時も結構大掛かりな移植が必要になったりします。
一方、栽培に慣れてくると、敢えて移植を行うこともあります。特に、移植を嫌わない種類は、むしろ同じところに長年植えていると徐々に小さくなってきたり、花付きが悪くなってきたりします。こういった種類は積極的に移植する方がよいものです。また、やや移植が難しい種類でも、株に刺激を与えて新しい根を出させるために移植を行うこともあります。
ミントやレモンバームなど、葉をたくさん収穫する種類は、株分けも必要ですし、何年に一度かは新しい場所に移植すると勢いが戻りやすいものです。
というように、いろいろな事情がありますが、ガーデニングを楽しむ以上、多かれ少なかれ行う作業の一つです。
移植する時期
原則として、真夏はのぞきましょう。また、移植後すぐに暑い時期を迎える梅雨時期も避けたほうが安心です。寒さに強いハーブなら秋から春先にかけてがおすすめです。また、花が咲く間と、開花前後しばらくは避けたほうが安心です。開花3ヶ月前ぐらいなら比較的安心ですし、開花がおわったあとは、一月ぐらい休ませてから行いましょう。
移植が可能なサイズ
移植は、株が小さければ小さいほど行いやすいものです。逆に、大きくなれば大きくなるほど難しくなります。
一般に植えてから1,2年のうちなら比較的大丈夫ですが、4,5年たった株は下記の「移植が行いやすい種類」でなければかなり難しくなります。特に、背丈を越えるような「木」になってくると、作業自体が初心者には困難です。きちんと行うならしかるべきガーデニング業者、植木屋さんなどに頼む方がよいでしょう。
移植が行いやすい種類
ミント、レモンバーム、ワイルドストロベリー、ニオイスミレ、ローマンカモミールなどの移植は初めての方でも容易に行えます。
一般に株分けしやすい種類は移植も行いやすい種類です。また、グラウンドカバーになる種類は移植も比較的行いやすいものが多いです。
移植がやや難しい種類
ラベンダー、ローズマリー、タイム、ゼラニウム、セイジ、オレガノなどの種類は移植がちょっと難しいです。でも、植えて1,2年の小さめの株なら大丈夫です。
移植が難しい種類
イタリアンパセリなどの、セリ科ハーブ、定植して3年以上経って大きくなったラベンダーやローズマリーは移植がかなり難しくなります。また、ボリジ、ジャーマンカモミール、コリアンダーなどの一年草ハーブは、成長が早い分、成長の途中で移植するのはあまりお勧めできません(バジルは比較的大丈夫です)。
移植方法
さて、実際に移植作業をしてみましょう。
今回、移植を行うのは当店のお客様の花壇に育っているタイムです。
この、コーンヘッドタイムはタイムの中でもかなり乾燥を好みます。特に山陰のジメジメした気候は苦手なので、あえて屋根の下の雨がかからない場所に植えました。
半年ぐらい非常に良い感じで育っていましたが、南西側に日を遮る壁があることでやや徒長気味になりました。最初は上にまっすぐ伸びていたのに、冬の間の日照不足もあったのかもしれません。太陽の方向に曲がって育ってしまいました。
また、隣にあるリリアンポッテンジャーゼラニウムが勢力を増してきて、窮屈そうです。このゼラニウムの成長ぶりはちょっと予想を裏切るぐらいでしたので、少し剪定しても良いのですが、この場所はどうやらゼラニウムに明け渡したほうがよさそうです。
そこで、タイムは写真右奥、ちょうど花壇の反対側に当たるもう少し日当たりの良い場所に移植することになりました。
移植先の準備
まずは、移植先をきちんと準備しておきます。ハーブを掘り上げてから慌てて移植先を探したりしなくて良いように、あらかじめ場所を決めて、耕したり肥料を与えたりしておきましょう。
剪定
移植によって根には大きな負担がかかります。少しでも根の負担を減らすために、地上部を少なくしてやりましょう。そういう意味では、落葉するハーブは冬に行うのがおすすめです。
今回は日当たりが不足して枝も斜めに育ってしまったため、形を整えつつすこし強めに剪定しました。
掘り上げ
根はできるだけ多く掘り上げることができればベストですが、あまりいじくるよりは、すっぱり切って掘り上げる方が良いでしょう。周囲をなるべく深く掘ってやりましょう。
真下に伸びる根もありますから、特に大きくなった株はしっかり深くスコップを差すと良いでしょう。
なるべく根から土を落とさないように掘り上げ、定植先へ移動させます。
定植
定植先は土作りなど、あらかじめ準備しておきます。
高さや方向を調整して定植します。
枝にまだ気になるところが残っていましたので剪定し直しました。
移植完了です。必要ならば支柱をしてやるとなお良いでしょう。
水やり
たっぷり水をやっておきましょう。しばらくはこまめに様子を見てやると良いでしょう。
ワインポイントアドバイス
移植が難しい種類を移植せねばならない場合、移植する1,2か月前に株の周囲を掘って根を少し切って刺激を与えておきましょう(スコップを株の周囲にぐるっと突きさしても良いでしょう)。新しい根が出やすくなり、移植しやすくなります。余裕がある場合は試してみましょう。
また、難しい場合は無理やり移植をせずに、挿し木などで代わりの株を育てるのもひとつの方法です。
まとめ
今回は、花壇に植わっているハーブを使い、移植について学びました。同様の方法で、寄せ植えの植え替えや、アレンジし直しも行えます。
移植は、ガーデニングをしていると比較的よく行う作業です。時期や方法さえ間違わなければ決して難しくはありません。ただ、大きくなればなるほど難しくなるのは確かです。最初は小さめのものから練習してみましょう。
いかがでしたでしょうか。もし、まだ良く分からないことがあるという方のためには初心者の方専用ホットラインをご準備いたしております。ご質問等お気軽にお寄せください。