冬にこそ行いたい鉢の植え替え
寒さの中、ハーブたちも成長を止める冬。
あるハーブは葉を落とし、また、あるハーブは地上部をすっかり無くして来るべき春を静かに待っています。
我々も、ハーブたちのように静かに春を待つのも良いのですが、この季節だからこそ行いたい作業もあります。それが鉢の植え替えです。
「植え替えって難しいんじゃないの」とか、「鉢を逆さまにしたりして大丈夫?」、「かえって弱らせてしまうんじゃないかと思って怖くてできない」と言われる方も多いようです。
でも、植え替えを行わずにそのままにしておく方がむしろ株にとってはよくありません。正しいタイミングで、正しい時期に行えば決して難しいものではありません。
冬は気温が低くて、植物の活動が緩やかです。人間も麻酔で眠っているうちに手術を行うのと一緒で、ハーブたちも眠りについている間のほうが根を整理したり、枝を剪定するなどの強い刺激を与えても影響が少ない時期です。
鉢の植え替えを行って、ハーブたちに素敵な春を迎えさせてやりましょう。
以前、ヘルプ・Q&A内の、「同じサイズの鉢に植え替えするには」という記事で、ローズマリーの植え替えをご紹介しましたが、今回はいくつかのパターンにわけてより詳しく説明します。
植え替えを行う理由
植え替えを行う理由がいくつかあります。
株の成長の為
土は年月が経つと徐々に粒子が小さくなってきます。水はけも徐々に悪くなります。
また、より大きく育てるためには鉢のサイズを大きくする必要があります。鉢のサイズアップ(鉢増しとも言います)にも冬は良いチャンスです。
肥料分の補充
水やりを行うことで、鉢からは徐々に肥料が流れ出します。
もちろん、ハーブが吸収して土から失われる肥料分もあります。ハーブの冬の追肥で紹介したように、肥料だけを追加することもできますが、植え替えで土も一緒に入れ替えるのも良いでしょう。
傷んだ根を取り除き、新しい根の成長を促す
鉢植えは根を広げる範囲が限られています。長く育てていると根詰まりを起こしやすいですし、水のやりすぎなどで根腐れを起こすこともあります。
定期的に根の状態をチェックして傷んだ根は取り除く必要があります。また、根に刺激を与えることは、新しい根の成長を促すことにもつながります。
病害虫のチェック
私たちが知らないうちに、鉢にはあまり嬉しくない居候が住み着いていることがあります。
鉢の隅や底にはナメクジがいたり、土の中には夜盗虫、コガネムシの幼虫が住み着いていることもあります。この機会に退去していただきましょう。
不要な枝や葉の処理
株元に落ちた古い葉を取り除くにもいいタイミングです。また、冬に地上部が枯れる種類は、前年の葉や枝を片付けてやりましょう。地植えなら、落葉もまたきちんと分解されて肥料として使われますが、鉢植えの場合、分解に必要な条件が不十分です。かえって病気やトラブルの原因になりかねません。
などなど、植え替えにはとてもたくさんの意味があります。
植え替えに適した季節
基本的に、早めに行うなら秋の落葉後、春は新芽が動き出すまでがよいでしょう。
地域によって違いますので、暖かい地域は年明け以降になることもあります。寒冷地では少し寒さが緩んでからのほうが安心です。
ちなみに、植え替えを他の季節に行う場合も、基本的に今回の方法で行うことができます。
対象のハーブ
特に冬の植え替えが適している種類は、落葉するハーブ、地上部がなくなるハーブです。また、ミントなど成長が早かったり、大きく成長する種類は肥料の消費も大きいものです。積極的に植え替えすると良いでしょう。そのほか、ラベンダーやタイムなど寒さに強い種類もこの季節の植え替えが適しています。
一方で、寒さに弱いハーブは寒い時期の手入れはあまりお勧めできません。レモングラスなど暖かくなってからの植え替え、または秋のうちに行う方が安心です。とはいえ、暖かい地域ならば話は別です。そのため、地域によっても条件は変わります。たとえば当地松江では、ゼラニウム類は冬でも植え替えを行うことがあります。でも、レモングラスなどは避けるようにしています。
また、セリ科のハーブなど、もともと植え替えを嫌う種類はできれば避けましょう(セリ科でもフェンネルは結構大丈夫です)。ほかにも、ジャーマンカモミールやディル、コリアンダーなど春からの成長が著しく速い秋植えの一年草は始めから大きな容器に植えてやる方が成長はよいでしょう。
あわせて開花中の種類は避ける方が安心です。絶対に無理ではありませんが、花が終わってからの方がよいでしょう。
植え替えの方法 1.鉢のサイズを大きくして植え替える
植え替えには大きく分けて以下の3パターンがあります。
小さい鉢で育てていて、もっと大きく育てたい場合は鉢のサイズを大きくしましょう(鉢増し)。土の追加も容易で作業もやりやすい方法です。ただ、8号鉢以上になると徐々に大変になってきます。その場合は、「2. サイズはそのままで植え替える」方法や、「3. 鉢から出さずに植え替える」方法を試してみましょう。
今回は、6号鉢(直径18cm)のヘザーの株を、8号鉢(直径24cm)に植え替えます。
まずは剪定
まず、作業の前に剪定を行います。植え替えは根に負担がかかりますから地上部も減らしてやるとよいでしょう。
冬は強い剪定も安心してできます。形が悪い枝や、弱い枝などを中心にコンパクトにまとめ、株に刺激を与えてやりましょう。
株を鉢から取りだす
次に鉢を逆さまにして鉢底を軽く叩いてやると根ごと株が抜けてきます。
どうしても抜けない場合は軽く株を引っ張ったり、鉢の縁の方をスコップなどで掘ってやりましょう。根が張りすぎていたり、鉢の形などからどうしても抜けない場合は最後の手段で鉢を割ったり切ったりする必要がある場合もあります。そうならないよう、定期的に植え替えを行いましょう。
根をチェック
まず、根の状態をチェックします。傷んでいたり、腐っている部分は取り除きます。害虫もチェックしましょう。ナメクジなどは鉢底にいることが多いので特に念入りに。
根の整理
また、あまりに根詰まりしているようなら根を整理します。全体をほぐすよりは、2、3箇所切ってやったり、削ってやる方がダメージが少ないです。根詰まりしていたり、コガネムシなどの食害がひどい場合は大半の土を落とすこともあります。
上面の土には小さな雑草が生えていたり、土が特に劣化しているので少し取り除きます。
植え付け
新しい鉢を用意して、鉢底石を入れ、土を加えます。
今回は植え替え用の土として、あらかじめ肥料や微量成分も含まれているオリジナルハーブ用土を利用します。水はけ、水もちもよく、初心者の方でも使い易い土です。
高さを調整して株を入れ、周りに土を入れて出来上がりです。
たっぷり水を与えておきましょう。
まとめ
鉢のサイズを大きくして植え替える方法は最も基本的な植え替えで、一番確実な方法です。
複数の鉢で行う場合は、大きい鉢から順に行っていくと、植え替えで空いた鉢を上手に使いまわすことができます。
とはいえ、鉢サイズを大きくしていくのは、場所的な制約や重さなどの関係もあり、果てしなく続けるわけにはいきません。そのため、同じサイズの鉢で植え替えする必要も出てきます 。
次回以降、冬に行う鉢の植え替え(その2)では、鉢のサイズはそのままで植え替える方を。また、冬に行う鉢の植え替え(その3)では、鉢から出さずに植え替える方法も紹介いたします。お楽しみに。
今回使用した材料:
オリジナルハーブ用土,
オリジナルハーブ用土・お得な10リットルサイズ
いかがでしたでしょうか。もし、まだ良く分からないことがあるという方のためには初心者の方専用ホットラインをご準備いたしております。ご質問等お気軽にお寄せください。